「文藝春秋」の検索結果

2016年書籍ベスト10

●マチネの終わりに(平野啓一郎)毎日新聞出版

●浮遊霊ブラジル(津村記久子)文藝春秋

●クラウドガール(金原ひとみ)朝日新聞出版

●コンビニ人間(村田沙耶香)文藝春秋

●ジニのパズル(崔実)講談社

●赤へ(井上荒野)祥伝社

●手のひらの京(綿矢りさ)新潮社

●愚か者(松田公太)講談社

●これからの世界をつくる仲間たちへ(落合陽一)小学館

●流星ひとつ(沢木耕太郎)新潮文庫

2016-12-31

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2015年書籍ベスト10

●後美術論(椹木野衣)美術出版社

●薄情(絲山秋子)新潮社

●軽薄(金原ひとみ)「新潮」2015年7月号

●ユートピア(湊かなえ)集英社

●繭(青山七恵)新潮社

●スクラップ・アンド・ビルド(羽田圭介)文藝春秋

●サナキの森(彩藤アザミ)新潮社

●レクイエムの名手(菊池成孔)亜紀書房

●過剰な二人(見城徹・林真理子)講談社

●聞き出す力(吉田豪)日本文芸社

2015-12-31

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2014年書籍ベスト10

●ニッポンの音楽(佐々木敦)講談社現代新書

●東京の家(写真:ジェレミー・ステラ)ル・レザール・ノワール

●離陸(絲山秋子)文藝春秋

●穴(小山田浩子)新潮社

●エヴリシング・フロウズ(津村記久子)文藝春秋

●春の庭(柴崎友香)文藝春秋

●サラバ!上・下(西加奈子)小学館

●よるのふくらみ(窪美澄)新潮社

●2035年の世界(高城剛)PHP研究所

●エースと呼ばれる人は何をしているのか(夏まゆみ)サンマーク出版

2014-12-30

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『イタリアンばなな』 アレッサンドロ・G・ジェレヴィーニ+よしもとばなな / 生活人新書(NHK出版)

あまりに残酷な真実を暴くクリスマス。

林真理子の「20代に読みたい名作」(文藝春秋)には、古今東西54編の小説が紹介されている。
「この中の何冊を読んだ?」と20歳の女子大生A子とB子に聞いてみた。

「本はあまり読まない」というA子は、よしもとばなな「キッチン」のみ。「読書が好き」というB子は、村上龍「限りなく透明に近いブルー」村上春樹「ノルウェイの森」向田邦子の「思い出トランプ」山田詠美「放課後の音符(キイノート)」、よしもとばななの「キッチン」の5冊をあげた。ちなみに2人とも、林真理子の小説は読んだことがないという。

おそるべし、よしもとばなな!
彼女の人気は国内だけではない。イタリアでは、1991年に「キッチン」が出版されたのを皮切りに11の作品が翻訳され、約250万部が売れたそう。ばなな作品を数多く翻訳しているアレッサンドロ・G・ジェレヴィーニ(以下アレちゃん)によると、本を読むというのは沈黙の中の行為であるから「僕たちイタリア人にはあまり向いていない」とのことだが、よしもとばななは、まさに日本人作家として前例のない成功をおさめたのだ。イタリアでの売れ行きに触発され、彼女の作品は今、34の国や地域で出版されている。

本書には、よしもとばななのエッセイ、アレちゃんのエッセイ、仲良しの2人の対談などが収録されている。

博士論文を再構成したアレちゃんの一文「よしもとばななの原点を読み解くキーワード『家族』『食』『身体』」は素晴らしい。ばなな作品をここまで理解し、美しい日本語にまとめることのできるイタリア人なら、彼女も安心して翻訳を任せられただろう。「つぐみ」の一部のイタリア語訳とそのポイントまで掲載されているのだから、イタリア語を勉強中の身としては、そそられる内容だ。

「イタリア語はどの国の言葉よりも、いちばんいい感じに乗る気がします。乗る可能性の高い言葉の組み合わせというか。もともと、美しさとか哲学を表現するためにラテン語から発達していった言葉だから、形容詞の数が圧倒的に違う」(byよしもとばなな)

「クリスマスの思い出」という日本初公開の彼女のエッセイも、日本語とイタリア語の両バージョンが収録されている。ここに描かれるイタリアのクリスマスの記憶は鮮烈だ。クリスマスなのに別れかよ?しかもこんなに美しく?少なくとも、日本のインチキなクリスマスにおいては、ここまで本当のことを突き詰めるシチュエーションなんて、ありえない!よしもとばなな特有の「一瞬にすべてを注ぎ込む大袈裟な感動の表現」は、イタリア語にこそふさわしいのかも。

インチキなクリスマスが終わり、凍えるような深夜、私が考えたいのは「キッチン」のことである。アレちゃんの論文では随所が引用されるが、私も、この小説の最も美しい一節を引かずにはいられない。

「ものすごく汚い台所だって、たまらなく好きだ。
床に野菜くずが散らかっていて、スリッパの裏が真っ黒になるくらい汚いそこは、異様に広いといい。ひと冬軽く越せるような食料が並ぶ巨大な冷蔵庫がそびえ立ち、その銀の扉に私はもたれかかる。油が飛び散ったガス台や、さびのついた包丁からふと目を上げると、窓の外には淋しく星が光る。
私と台所が残る。自分しかいないと思っているよりは、ほんの少しましな思想だと思う。」

2002-12-27

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