月9広告代理店ドラマにおける伊東美咲と亀梨和也のリアリティ。
フジ月9ドラマ「サプリ」から目が離せない。
主役はCMプランナーの藤井(伊東美咲)とアルバイトのイシダ(亀梨和也)。ロケ地は東銀座のアサツーディ・ケイ本社。この手のオフィスラブものには以前から引っかかるものがあったが、うちの両親が出会ったのは、母が勤めていた丸の内の某社で、そのとき父は学生アルバイトだったのだと先日知った。マンマミア! 父のトレンディドラマ好きは、そういうことだったのか? 「サプリ」も見ているに違いないが、感想はこわくて聞けない。
「サプリ」には、外からの視点がある。イシダ(亀梨和也)は、アルバイトならではの、お気楽でちょっと鬱陶しくて、だけど新鮮な空気を運ぶ若者を好演しているし、フリーコピーライターの柚木(白石美帆)という個人的に見逃せないキャラも登場する。火花を飛ばしあう営業の田中(りょう)と制作の藤井(伊東美咲)の2ショットは<資生堂のモデル×2>にしか見えないけど、広告代理店にキャッチーな美女が多いのは事実。先日、電通本社で受付の女性たちを前にして、私と一緒にいたイシダ(亀梨和也)に似ていなくもないコピーライター志望のNは「全員エビちゃんに見える!」と叫んだくらいだ。
原作を読んだが、著者はかつて博報堂に勤めていたそう。このリアルは<広告代理店勤務>と<フリー>の両方を経験した<女>にしか描けないと思う。原作には、柚木が仕事を切られるシーンもある。「彼女、女の割に高いんだよねー料金。変にこだわるしさあ。使いづらいよなー」って。
仕事で疲弊して、毎日がいっぱいいっぱいで、考えること山積みで、それでも恋愛よりはラクで、とはいえ本当に大切なものが何かは年齢と共に問われていて、不倫や二股や三角関係や片思いやいろいろあるけど、救いというのは案外小さな部分にあって、どんなに忙しくてもそれだけは見落とさず、大事にしてつなげていくことが人生だっていう、そんなことを「サプリ」は気づかせてくれる。
「化粧品とか 服とか 流行とか おいしいものとか
武器はそろっているのに いっぱいあるのに
たったひとつ持ってないもの かわい気」
「このまま光速で働いたら 女以外の別の生き物になれそうな気がする
もしかしたら 私はそのために働いているんじゃないかしら」
「仕事がありがたいのは 他人とご飯が食べられることだ
あたり障りのない会話をする
おいしく食べるためにみんなで気を遣い合う
食事をキチンとエネルギーにする時間 大切なことだと思う」
「会社っていうのは『失敗を少なくする』というシステムだ
何事にもフォローする人がいてノウハウがある
その分個人の気持ちが置いていかれたとしたも
それが『みんなで仕事をする』ということです」
「仕事も私の一部なわけで
しかもそのウエイトがかなりの割合を占めている私は
それをはずされたとたんに途方にくれる」
「だって疲れた顔した女に仕事頼もうと思わないでしょ?
笑顔ひとつで仕事回るなら安いものよ」
藤井を見て思い出すのは、某広告代理店の先輩ディレクターS。彼女はいつも夜遅くまで会社にいるが、いきなり電話すると意外とあっさりつきあってくれる。で、限りなく飲める。理想のタイプはと聞くと「結婚してない人!」と即答する。運転しながら助手席の私と話しながら電話も受けながら資料をまさぐる彼女を見ていると、ひとつしか集中できない私は、組織のリーダーなんかには絶対なれなくて、だからフリーなんだなと納得したりする。Sは藤井に似ているけど、やっぱり違うから、私は今日も「私家版サプリ」を勝手に構築して、頭の中で楽しむのだった。
2006-8-21
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