伊集院静氏がモテる理由。
アンアン10月2日号の「愛されるひと、愛されないひと」特集の巻頭にhitomiと優香が登場していた。
彼氏に振られ慌ててしまい、軽い気持ちでこの世界に入ったという優香は「私には競争心というか、人の上にたちたいという気持ちがあまりない」と言い、子供の頃に両親が離婚したことから愛情あふれる人に憧れるというhitomiは「『IS IT YOU?』という曲の歌詞で”君だと信じた瞬間に強い風が吹き乱れた”というフレーズがあるんですが、そういう歌詞を作るとき、自分の中で大きな愛を意識します」と言う。
彼女たちが「愛されるひと」であるとするならば、その理由は、他人を受け入れ、信じることの大切さを知っているからではないかと思う。他人を信じるとは、自分の価値観を信じること。未知の存在を受け入れることで、人は初めて自力で自分を肯定できる。そんな自立した価値観こそが、多くの人に愛されるのではないだろうか。
「少年の心を忘れない2人による異色のコラボレーション」という帯のついた本書は、最後の無頼派とよばれる作家の伊集院静氏が少年時代を綴り、タレントの堂本剛クンがイラストを描いており、愛される男の代表として2人が選ばれたかのようにも思われる。2人の共通点はダックスフントを飼っているということで、彼らが犬の話を通じて語っていることもまた、他人を受け入れ、信じることの大切さなのだった。
大家族の中で、少し変わった子どもというレッテルを貼られて育った伊集院静氏が、最初に相手を信頼し、相手も無条件に友だちと認めてくれたのは、一匹の雑種の仔犬だったそう。「私のファースト・フレンドはベストパートナーでもあった。私はしあわせな時間を持てたと今も思っている」と彼は言う。「最後の無頼派」の原点は、こんなハッピーな少年時代だったのだ。
小学2年生の時、伊集院静氏が初めて自分の絵を誉められたときの話も印象的だ。
先生「うん、これはいいぞ。とてもいい絵だ」
F君「うわっ、面白い。とてもいいよ」
このときのF君の声と表情を、彼は今も覚えているといい「あの時、私はF君に、ありがとう、と言っただろうか」「素直に人が賢明にやったことを誉める人間に自分はなっているだろうか」と自問するのである。
幼い頃に、このような形で信頼しあえる犬や友達に恵まれた人間は、大人になってからひねくれるはずがない、と私は思う。まっすぐに他人を信じ、自分を信じることのできる人間は、弱い者をいじめたり蹴落としたりすることがないだろう。こういう男は、他人との比較の中で生きるということがないから、オンリーワンになれる。つまり、確実にモテるのである。
本書に収められている伊集院静氏の文章は、堂本剛クンに向けて書かれたという。彼は剛クンの写真を初めて見たときにこう思う。「変な話だけど、もし地震なんかが起きて、私が柱の下に埋まったとして、『すみません、助けてください』と頼んだら、きっと助けてくれそうな感じがしたんだよね(笑)。男の子同士だからわかる感覚で、これはすごく大事なんです」
モテる男は、年齢・性別を問わずに他人を信頼し、甘え、スペシャルな関係を結んでしまう。伊集院静氏は、落ち着いた年長者の口ぶりでありながら、実は、30歳も年下のアイドルに甘えているのだ。さすが、かつて夏目雅子と桃井かおりを三角関係で争わせた男だけのことはあるではないか。本書の中で、現在の妻、篠ひろ子が彼に対して使う敬語には「うっそー」と驚いてしまうが、現実には、彼のほうがどろどろに甘えているにちがいない。
2002-09-27
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