短命を恐れないかっこよさ。
ロック史上もっともスキャンダラスで悪名高いバンド、セックス・ピストルズの未公開映像がたっぷり楽しめる映画。当時の英国のニュースフィルムやコマーシャル、コメディなどがコラージュされ、70年代という時代をシャワーのように浴び、興奮することができる。
「アナーキー ・イン・ザ・UK」のイントロが流れ、ジョニー・ロットン(ジョン・ライドン)や死の直前のシド・ヴィシャスの表情を見るだけで鳥肌がたつ。大人を裏切る若者の胸のすくような過激さは、時代を経ても色褪せない。
にせものだけが生きのびる、というメッセージを残し、セックス・ピストルズはわずか26か月で解散。公式発表アルバムはたった1枚。これほど短命なバンドが、パンク以降のあらゆるカルチャーシーンに影響を与えたのだ。生きのびようとあがくことの醜悪さから、私たちは逃れることができるのだろうか?
「俺たちは俺たちでいたってこと。それが後から革命だとか言われたんだ」とジョニー・ロットンは語る。自分に忠実であることがすべてと言い切れる思想は、健全で鋭い。彼らの行動やファッションをまねすることは、パンクの真の意味から遠ざかることにしかならないだろう。
次のムーブメントは、いつどこで起きるのか? 不況で鬱屈する労働者階級からセックス・ピストルズが生まれたように、不自由であることに敏感なエリアから予想外の形で炸裂するはずだ。そう考えると、不安や不満がいつまでもなくならない世の中のしくみにも、希望がもてる。
*1999年イギリス映画/シネセゾン渋谷で上映中
2000-11-25